
果樹園から聞こえてくる、林檎の白い花のきよらかな歌声。
その美しいメロディは、緑の山を越えて、透明な川を渡り、野鳥のちいさな背に乗って、春の野にやさしく響き渡り、
あらゆるものをしずかに浄化してゆきます。
林檎の白い花をそっと覗き込むと、そこには、やがてここに実る果実の、赤く可憐な姿が、ふわりと映し出されているのです。
「もうすぐだよ」という、愛らしい声とともに。

満開の林檎の花を、ひとり静かに見上げる時。
「林檎の花びらが抱きしめている未来は、私たちが夢見る、白く清められたゆたかな地球の未来でもあるのだな」と。
なんだか、そんなふうに感じることがあるのです。
さて、今号の特集は、「果物と野菜たちがささやく物語」。
皆さんの日々の食卓に、野菜や果物という名の、緑の恵みがあふれるとき、その尊い植物の花期の姿を、
ぜひ頭に浮かべていただけたら嬉しいです。
ただいま、特集第一弾を準備中です。
皆さん、どうぞお楽しみになさってくださいね。
また今号も、素敵な専門家の方々にご寄稿いただく予定です。
花の開花期と合わせて、順次ご紹介できたらと思っております。
それでは私たちと一緒に、素朴な野菜や果物の花たちの物語を、五感を使ってゆたかに味わいながら、
ゆっくりと読み進めてゆきましょう。
緑いろの眩しいひかりが、ふかふかの土へと惜しみなく降り注ぐ、爽やかな立夏の日に。
2025年5月5日
Coming Home編集部 浅野典子